第102章 ŹOOĻ!ŹOOĻ!ŹOOĻ!
『 D.C 』
「……は?」
『ダ カーポ。意味は、振り出しに戻る。
人は、何度だってやり直せる。そうは思いませんか?だから了さん。今度は、奏でる音を間違わないよう』
耳に痛いくらいの静寂。しかしそれは、突如として破られる。了が、破裂するように笑い声を上げたのだ。腹を抱えて、足をふらつかせ爆笑する。
「あっは!はははっ!!あはは!ダッサ!ダサい!ダサ過ぎる!!
…そんなの、ダサすぎて…一周回ってカッコイイよ。何かの間違いで、僕が君に惚れたらどうするの」
『告白して来ませんようにって祈ります』
「じゃあ結婚してよ」
『告白の上をいかないでくださいよ』
「じゃあ付き合って」
『全力でお断りします』
「ちぇっ。このケチんぼ。ワガママだなってよく言われない?」
『その台詞、言われたくないランキング1位に貴方は君臨しています』
「はいはい分かった分かった。なら…」
了は若干 頬を赤くして、私を見ずに告げる。
「と、友達ってことで、特別に手を打ってあげるよ。仕方ないからね」
『ドア イン ザ フェイス テクニック*1ですね』
「バレたか。君には心理的な追い込みも通用しないんだから。心底つまらな」
『いいですよ。友達になりましょう』
私は、了の前に手を差し出した。彼の瞳は大きく揺らぐが、すぐにいつもの余裕のある顔に戻る。
そして、自らの手をゆっくりと合わせた。
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*1
まずは、相手に断られるであろう過大な要求を提示。それを断られた後、小さな要求(こちらが本命)を出す方法。まぁそれくらいの要求なら…となる人間心理を利用した交渉テクニックの1つ。