第102章 ŹOOĻ!ŹOOĻ!ŹOOĻ!
「ところでさ。やっぱり、何かの間違いでうちからデビューしちゃわない?」
『しませんて。いい加減に諦めてくださいよ』
「本当に?勿体ない。ツクモの社運を賭けてバックアップするのになあ」
『Lioとしての私は、もう死んだんです。彼女が世に出ることは、世界がひっくり返ってもあり得ませんから』
この話を何度されても、堂々巡りになるだけ。まさに時間の無駄だ。
私はバイクに跨って、ヘルメットを被る。
「…ステージで光る君が、どうしてもまた見てみたいんだよね。どれだけ時間が経っても、忘れることも出来ないやしない」
『え?』
ヘルメットがあるせいか、了の言葉が上手く聞き取れなかった。
「あの時の君は、まるで空で瞬く間キラキラ星みたいだったよ」
耳を澄ましていたから、今度はしっかりと聞こえた。それにしても、彼がまさか女性を星に例えるなんて。控え目に言って心臓が止まるくらい驚いた。
『…その星は、地に落ちましたけどね』
「あっはは!そうだった!それは見事に墜落したよねえ!」
もう、いつもの彼だった。その嫌味しかない笑顔に、腹が立つような、安心したような。
「どうして、落ちたのが八乙女プロだったのかなぁ」
『私が落ちる場所を選んだわけではないので、分かりません。
では、私はこれで失礼します。おやすみなさい』
ついにエンジンを入れ、私は自宅の帰路についた。
「どうせなら、僕の隣に落っこちてくれれば良かったのにさ」