第102章 ŹOOĻ!ŹOOĻ!ŹOOĻ!
「初めは、手掴みで食べるのは行儀だ悪いと躊躇したが、不思議なもんでこうやって食った方が美味いな」
「良かったなトラ!ほら、俺のも食えよ!」
「オレの分も食べていいよ」
「良ければ私のチキンもどうぞ」
「そんなにチキンばかりいらない…」
あっと言う間に、私達は山盛りのチキンを平らげた。
「にしても、本当にライブが上手くいって良かったな。了さん、俺らのグッズ身に付けまくっててさ、笑っちまったよ。でも、嬉しかった。これからは、あの人とも手を取り合って前に進んでいけるんだと思うと…感無量っつーか、幸」
「お待たせしましたー、ミラノ風ドリアです。失礼します」
虎於が、また目を剥いたのは言うまでもない。
それは私の注文した物だった。目の前に置かれたドリアが、ほこほこと湯気を立てている。どうせなら皆んなでシェアして食したいと、私は早速取り分ける。勿論、一番最初に手渡したのは虎於だ。
『どうぞ、少しあげますね』
「いいのか。悪いな」
私達はまたしても、じぃっと虎於を見つめる。
「お味はどうですか?御堂さん」
「…なぁ。どうして今日は、やたらと俺にばかり構うんだ」
「か、構ってないけど!?自意識過剰なんじゃないの!?」
「注目を浴びるのは慣れてるが、お前らが相手だと違和感があるな」
「んなことより、ほら!味はどうなんだよトラ!」
トウマが感想をせっつくと、彼はまじまじと料理を見つめ答える。
「まぁ、普通に美味いんじゃないか。だが、味よりも俺が気になったのは…
この、トスカーナだ」
「「トスカーナ?」」
「ふふ、小皿のことですよ」
「プラスチックな上に、とても使い込まれていて…なかなかどうして、哀愁の様なものを感じないか?」
私達は強く唇を噛んだ。どこの誰が、サイゼリアの模様が擦り切れた取り皿を前に哀愁など感じるだろうか。