第102章 ŹOOĻ!ŹOOĻ!ŹOOĻ!
ドリンクバーは必要ないと言うくせに、食後のコーヒーは欲しいと言う虎於。私は笑いを堪えながら、注文を終える。
ジュースが飲み放題だと知った彼はまた驚いていたが、とにかく乾杯を済ませる。
料理を待っている間の話題は、やはり今日のライブのことになった。悠は、年相応の無邪気な笑顔を弾けさせて語る。
「今日のライブ、ほんっとに最高だったよな!オレ、なんかまだちょっとフワフワしてるかも。
自分達の歌を聴いてくれてるファンが笑顔になってくれるのって、あんなに嬉しいもんなん」
「お待たせしました、辛味チキンです。失礼します」
虎於は、悠の良い話をこれでもかというタイミングで遮った店員を、驚愕の表情で見つめている。まぁ高級レストランなら、客の会話を遮って料理を提供するなどもってのほかだろう。しかしここは当然ながら、彼が通っているような高級レストランではないのだ。
悠も特に気に留めることなく、辛味チキンの登場に喜んでいる。私は、虎於の取り皿にもチキンを入れてやる。
全員でいただきますをしてから、私達はチキンに齧り付く。
「うん、美味いな!やっぱここ来たら、これ食わなきゃ始まらな…」
トウマが、不自然に言葉を切った。そして、虎於の方を見て固まってしまう。私達は、トウマと同じ方に視線をやる。すぐに、彼が黙り込んだ理由に気付いた。
「……っ、」
(ト、トラの奴…!)
「…ふ、ふふ…っ」
(辛味チキン、ナイフとフォークで食べてる!)
「……っ、ふ、」
(私達が手で食べている光景が、どうして目に入らないのでしょうね?)
『……』
(面白いから、自分で気付くまで放置しよう)
虎於はナイフとフォークを使い、器用に取り分けた身を口の中に入れて、確かに美味いな…と小さく呟いた。