第102章 ŹOOĻ!ŹOOĻ!ŹOOĻ!
そういう流れで、大衆食堂風イタリアンにやって来た私達。店に入るなり、虎於が唸る。
「ほぅ。ボッティチェリのプリマヴェーラに、ラファエロのシスティーナの聖母か。日本に来ているとは知らなかっ…」
「ボッテ?システィー?
あぁ、この絵のこと言ってる?サイゼじゃよく見るよね」
「…悠。残念だが、これらは全部 贋作だ…!」
「分かってるけど!馬鹿にしてんの!?」
案内された席に着くと、早速メニューを開く。サイゼに来たことなど絶対にないのであろう虎於が、またしても唸る。
「メニューに、実際の料理の写真が載ってるのか。分かりやすいし、画期的だな」
虎於を除く、私を含めた4人は顔を見合わせ頷く。それの意図するところは、こうだ。
“ 面白いから、虎於には ここがコスパ最強チェーンイタリアンであることは伏せておこう。面白いから ” である。
すると早速、虎於がまた何かに気付いたようだ。
「おい。大変だ…」
「お!どうしたトラ?今度は何が気になったんだ?」
「間違ってる」
「うん?…あぁ!もしかして、間違い探しか?分かるわ。俺もそれ、毎回ついつい意地になってやっちまうんだよな」
「…価格が、一桁間違っている」
ここで笑っては、この愉快な茶番が幕を下ろしてしまう。私達は、全身全霊の力を持って笑いを堪えた。
「あー…ヤバイ。このままじゃオレ、腹筋崩壊するかも」
「どうした?筋肉痛か?」
「ほ、ほら!なに食うんだ!?早く頼むもん決めちまおうぜ!」
トウマは、皆んなにメニューが見やすい様に大きく開く。すると悠が、嬉しそうに言う。
「やっぱ辛味チキンは外せないよね」
「辛味チキン?」
『食べる際、世界で一番 手が汚れるチキンですよ』
「その説明、頼む気なくしますね…」