第102章 ŹOOĻ!ŹOOĻ!ŹOOĻ!
元社長の視線は、私に向けられる。
「了は、八乙女プロダクションのアイドルに対し、虚偽の噂を故意に流した。名誉毀損で訴えれば、確実に勝てる内容だ。それでも君は、了を警察に引き渡すことを反対するのか?
それは、君の大切な者達への裏切り行為に値するのではないか」
彼の言い分はもっともだ。私だって、当初は了を再起不能にする為に動いていた。
私がいま下そうとしている決断も、正解なのか間違いなのか分からない。しかし…
『私の大切な人達は、本気で変わろうとしている人間には手を差し伸べる優しさを持っています。そして何より、ŹOOĻが必要としているのは私ではなく彼なんです。了さんには、彼らの傍にいてあげてもらわなくては。だから、気が変わることはありません』
私もTRGGERも、さっきRe:valeの2人が言ったように、了のことを心から許すことは出来ないかもしれない。怒りを忘れたわけでもない。
ただ、もう一度だけチャンスを与えることくらいは出来る。
「……君達が了にどんな期待をしているのか知らないが、この男は変わらないよ。人はそんな簡単に本質を変えることは出来ないのだから」
しかし…と続けながら、彼は私たちに背を向ける。
「弟を、まだそんなふうに思ってくれる人間がいることが少しだけ…嬉しかったよ」
そう言い残し、彼は警察を引き連れてこの場を去った。
「助けてくれなんて、誰も頼んでないんだけど」
「その減らず口を今すぐ聞けなくしてやろうか」
『ゆ、千!落ち着いてください!』
4人になった途端に、了は早速毒づいた。警察を退けたは間違いだったのではと、脳裏によぎる。
「っていうか了さん…
その格好なに!?オレ、噴き出しそうになるのずっと我慢してたんだからね!?」
「気付いてくれた!?いいでしょ!羨ましい!?そうだ!特別に君達にも後でフルセット送ってあげるよ!」
すっかりŹOOĻの虜となった了を見ていると、やはりさっき脳裏によぎったことは杞憂なのだろうと思い直すのだった。
「ほら、アンコールみたいだよ。短い間ながらも、君が手塩にかけて育てた子達だろう?最後くらい、ちゃんと聴いてあげなくちゃね」
『そうですね。では、行きましょうか』
私達は、4人揃って関係者席へと向かった。