第102章 ŹOOĻ!ŹOOĻ!ŹOOĻ!
当然、了は文句タラタラだ。まぁあれだけ楽しんでいたところを邪魔されれば当然かもしれないが。しかし、事は急を要する。
『落ち着いて聞いてください。貴方は今、かなり危うい立場です。緊急事態なんです。実は、すぐそこまで警察が……』
「なに?」
『あの…ちょっと、お願いですから着替えてくれませんかね。シリアスな空気が、その格好のおかげでぶち壊しなんですよ』
「その程度のことでぶち壊れるなら、君が言う緊急事態って案外大した事ないんだねえ」
不意に、背後に冷たい気配を感じる。振り向くと、元社長と警察が立っていた。その瞬間に、私は自らが犯したミスを悟る。
「君を尾けていれば、了の元に案内してくれると思っていたよ。ご苦労だったね」
『…っく』
「うん?ねぇ、なにこれ」
「いわゆる、年貢の納め時という奴だよ。了」
「これは兄上様!ご機嫌麗しゅう。そういう古臭い言葉が相変わらずよくお似合いですね!きゃー素敵ー」
「……」
団扇をふりふりして、了は実兄を煽っていくスタイル。この人は、空気を読んだ上で壊してくるからタチが悪い。
「了、また他事務所のアイドルを手に掛けようとしたらしいな」
「はぁ〜?何のことだか、全く身に覚えがないなぁ」
「…まぁいい。どちらにせよ、お前はもう終わりだ」
彼がそう言うと、いよいよ警察が了の身を拘束しようと動き出す。
「色々とお伺いしたい話があります。署までご同行いただけますか?」
「まぁ、仕方ないかな。報いを受けないわけにはいかないことくらい、分かっていたからね」
『あ…、待っ』
私は結局、彼の心を掬い上げることが出来なかったのだろうか。ŹOOĻの想いが彼に届いたのかすら、分からず仕舞いで終わってしまうのか。
あぁ。私はなんて、無力なのだろう。
「あ、そーだ。君にひとつ残念なお知らせだ」
『え?』
「明日予定してた君のデビューライブは、無期限延期だ。楽しみにしてただろうけど、ごめんね」
『…了、さん』
「僕が居なくなった後も、ŹOOĻのことよろしく頼むよ?もし仮にあの輝きがくすむような事があったら、君を許さない。
彼らは僕の…大切なアイドルなんだからね」