第102章 ŹOOĻ!ŹOOĻ!ŹOOĻ!
了がこの会場にいることは確信していた。だが、さきほどまで居た関係者席では見かけなかった。では、どこにいる。熱狂する人々の海を掻き分けて、私は了の姿を探した。
ライブが終了するまでは、あと30分といったところか。それまでにこの数多な人の中から見つけ出さなくては。警察に出口を張られては詰んでしまう。
懸命に探すも、セットリストは容赦なく終盤に向かっていった。どこか、高い場所から見下ろしでもしない限り発見には至らないのではないか?それこそ、ステージの上から客席を見下ろすように。
私は絶望を抱え、縋るような心地でステージ上の彼らを見つめた。私は、ある違和感に気付く。
『……なんだ?ŹOOĻのファンサが…やけに集中してるポイントがある』
ウィンク、BANG、投げキッス。それらが集まっている箇所に気付いたのだ。さらに…
『あの振り付け…。あんなの、予定にない』
広いステージの上で離れて立つ4人が、銃を象った手で指差しをしている。
突如として行われたアドリブの意味など、考えるまでもない。4本の人差し指が、指し示す場所。私は反射的にそこへ向かって駆け出していた。
私の思った通り、了はそこにいた。
「ŹOOĻ!ŹOOĻ!ŹOOĻ!」
ライブTシャツに身を包み、頭には、ŹOOĻカラーの鉢巻。手には、メンバーの名前が入った団扇が4枚。周りにいる女性ファンに、違和感なく溶け込んでいた。
『ちょっと!!そこまでエンジョイしてる場合じゃないんですよ!』
「あ、ねぇ似合う?さっき物販で買ってきたんだけどさ!Tシャツ、やっぱりMじゃなくてLにすれば良かっ」
私は彼の言葉を最後まで聞かず、関係者通路まで引っ張っていった。