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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第102章 ŹOOĻ!ŹOOĻ!ŹOOĻ!




天が搬送された病院は、さきほど姉鷺から聞かされていた。しかし、肝心の容態は教えてもらっていない。突然の、看板アイドルの事故だ。現場は相当混乱し、情報が交錯していても何らおかしくない。八乙女宗助の携帯にかけても、一向に繋がらなかった。

バイクを走らせつつも、姉鷺のあの取り乱しようがどうしても頭から離れない。どうか、軽傷であって欲しい。そう願うことしか今の私には出来なかった。

都内にある病院に着いたのは、全速で走り出してから30分ほど経った頃だ。私は投げるようにバイクを駐輪場に放り込むと、そのままの勢いで受付へと急いだ。


『は…っ、はぁ…!あの!』

「こんにちは、どなたかのお見舞いですか?」


私は息を落ち着けるのも忘れ、声を抑えて受付の看護師に問い掛ける。


『ここに、さきほど、アイドルの九条天が搬送されたはずです…!どこに、どこにいますか?面会を希望します』

「……関係者の方だと証明出来る物を、何かお持ちでしょうか?」


当然の対応だろう。天は、一般的な患者とは違う。面会に来た者を簡単に通すはずがないのは、予見できたはずだ。しかし今の私は、そんな余裕など皆無であった。

名刺…は、ツクモの物しか今は持ち合わせていない。
免許証…は、八乙女プロとの繋がりなど証明出来ない。それどころか、顔写真が今の私とは違い過ぎていて、むしろ怪しさを助長しかねない。


『…彼がここへ搬送された事実を現時点で知り得ていることこそが、私を関係者だと証明することにはなりませんか』

「申し訳ありませんが…」


情に訴えても効果はなかった。頭を冷やし、何か策を講じるしかないと思ったその時だ。受付の奥から、別の看護師が顔を覗かせた。


「あ…私、この方 テレビで見たことがありま」

『ありがとうございます!!』


結局、その看護師さんが私を八乙女の人間であることを説明してくれたのだった。

思わず、彼女の手をきゅっと両手で握り込む。可愛らしく頬を染めた彼女を見て、この時ほどメディアに顔を出していて良かったと感じた瞬間はないなと考えた。

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