第102章 ŹOOĻ!ŹOOĻ!ŹOOĻ!
そして翌日。私の長い1日が始まった。
夕刻、いよいよ命運懸けたライブが幕を開けようとしていた。ŹOOĻの面々は、自分達と時間を共有しに来たファンの数に圧倒される。それもそのはず。今日のライブは、今まで彼らが行ってきたライブの中でも、群を抜いて大規模である。特大なキャパシティに、豪華なステージ。最新鋭の投影機や音響。そのどれもが、今日は彼らの為にある。
4人は、自分達を今か今かと待っているファンを密かに見つめていた。
「皆さん、良いお顔をされていますね」
「だな。ここにいる皆んな、俺達に会いたくてここまで来てくれたんだよな」
「ふ、当たり前だろ。わざわざ足を運んだことを後悔させないよう、俺が最高の時間を提供してやる」
「…了さんも、どっかで観てくれてるのかな」
悠は観客席を遠い目で見つめ、そう零した。私はそんな彼にそっと近付く。
『大丈夫です。きっと来てますよ』
「まぁ…そっか。そういう約束だし。オレらのこと見定める為には、ライブに来ないわけいかないよな」
『いえ、その件を抜きにしても、彼はきっとこっそり観に来ていましたよ。
貴方達は気付いていなかったかもしれませんが、あの人はずっと、ŹOOĻのことを気に掛けていましたから』
4人は一様に、どういうことだ?と首を傾げる。私は、昨日 了とレッスン室を覗いていたことを伝えた。
「それ…ほんと!?了さん、オレらのこと見てくれてたの?」
「たまたま通りかかっただけなのでは?」
「おいミナ、元も子もないこと言うなよ…」
「巳波はリアリストだからな」
私は巳波と虎於の言葉に、ゆるゆる首を振る。
『私ね、こう見えてもあの人の秘書なんです。いつ無理難題を振られても良いように、彼のスケジュールと抱えている案件くらいは把握しています。
昨日のその時間、彼の次の予定は会議に出席することでした。押さえられていた部屋は、社長室から最も近い会議室です。そこはレッスン室とは、かなり距離がありましてね。
だから、あり得ないんですよ。あの時間、あの場所の前を、たまたま通りがかることなんて』