第102章 ŹOOĻ!ŹOOĻ!ŹOOĻ!
「じゃあなんだ。あんたは、俺のこの感情がただの勘違いだって言うのか?」
『はい』
きっぱり断言すると、しばらく虎於は じっと私の瞳を見つめた。それから、くつくつと肩を揺らし笑い始める。
振られ慣れていない彼がバッサリ振られたものだから、どこかおかしくなってしまったのと様子を窺う。
「そんな、ふざけた理由があるか。振るなら振るで、もう少しまともな理由で断ればいいだろ」
『私は至ってまともなつもりです』
「そうか。じゃあ、教えてくれよ。
あんたの前に立ってるだけで、足がこうも竦むのは何でだ。あんたがもうすぐ、ŹOOĻの前から消えると想像して泣きたくなるのは、何でだ?あんたの姿を瞳に映すだけで、心臓が勝手に逸(はや)るのは…何でだ!
これが全部、俺の勘違いだって言うんだったら、全部にそのもっともらしい理由を付けてくれよ。なぁ…頼むから」
『虎於…、わ かった。分かったから。私が、間違ってました。謝るから。だからどうか、泣かないで』
「泣いてないだろ!」
どうやら声が震えていただけで、泣いてはいなかったようだ。しかしあの虎於が、そんな気持ちを胸に押し込めていたなんて気付かなかった。そうとは知らず勝手に勘違いだと決め付けて、本当に申し訳ないことをしてしまった。
だが もっと申し訳ないことに、たとえ彼の気持ちが本物であったとしても、私の返答は変わらないのだ。
『ありがとうございます。貴方の気持ちは、確かに受け取りました。その上で、もう一度答えます。
私は、虎於とは 付き合えない』
「……おまえ…もしかして、怖いのか。誰かを、愛することが」
私は答える代わりに、静かに視線を伏せた。
「そうか。分かった。そういうことなら、待つことにする」
『は?待つ?』
「あぁ。実のところ今日ここに来たのは、あんたに断ってもらう為だった。だが、話が変わってきたからな」
『え、ちょっと。私を置いてけぼりにして、なに1人で色々と決めてるんですか』
「そりゃ1人で決める。恋は、1人でするもんだ。そうだろ?」
『…それは、まぁそうですけど』
「それに、あんた知ってるか?
この世に、溶けない氷はないんだぜ」
虎於はそう言って、世界で一番セクシーなウィンクを見せた。