第102章 ŹOOĻ!ŹOOĻ!ŹOOĻ!
『私は』
「ま、待て」
『何ですか』
「ちょっと…なんだろうな。心臓が痛い。座るから、少し待て」
しっかりと立っていたと思っていたのだが、虎於は意外と弱々しい動作でソファに腰を下ろした。そして、良いぞ。と合図する。
私は気を取り直して続けることにした。
『私は』
「待て」
『今度は何ですか』
「俺は振られることに慣れてない。だから、お手柔らかに頼む」
私はようやく気付いた。彼は、ただ単純に返事を貰いに来たのではない。
振られに来たのだと。
大切な明日を控えたその身で、ケジメを付けに来たのだ。
『……私はね、虎於…。
もう、恋人を作ることはしません。相手が貴方であっても、誰であっても同じことです』
「なんだ、その理由は。納得出来ないな」
『そうですか。でしたら、納得出来る理由を一緒に見つけましょうか』
振られると分かっていながら、簡単に引き下がってくれないらしい。やはり彼は、厄介な男である。こうなればとことん、話し合いに付き合ってもらおう。
『貴方は私のことを愛してなんて、いないんですよ。ですが虎於がこれを愛だと錯覚させてしまった原因は、他でもない私にあります。
他の男を愛し、決して手に入れることの出来ない存在だった私を、貴方は欲しがっていた。そんな女が、急に愛するべき者を失い自分に縋ってきたんです。まさに棚ぼたって奴ですね』
「…自分のことをぼた餅扱いするなよ」
『ずっと食べたかったぼた餅が、ひょんなことから手元な落ちてきたんです。期待、させてしまいましたね。すみません』
私の犯した最大のミスは、彼と体を繋げてしまったこと。私に情を抱いている彼に、さらに情を抱かせる結果となってしまった。
自暴自棄に陥っていたとはいえ、少なからず相手は選ぶべきだったのだ。
そうすれば、彼に期待をさせることも、これが愛だと錯覚させることもなかったのだから。