第13章 プロデューサーさんまでカッコ良いんですね…
いや、違う違う。私はここに、環と楽しくご飯を食べる為にやって来たわけではないのだ。
危うく本当の目的を見失ってしまうところだった。
ドリンクバーで、ミルクティーを淹れて来て再びテーブルへと帰って来る。
それは、そろそろ本腰を入れて話をする為の準備だった。
「なぁなぁ。ずっと聞こうと思ってたんだけど、なんであんた、そんな男みたいなカッコしてんの?」
私が切り出す前に、彼の方から切り込んできた。
『…TRIGGERと仕事をする上で、都合が良いからですよ』
淹れて来たばかりの紅茶に口を付け、目を伏せる。
「嘘、ついてるって事?」
この時初めて、環の瞳が嫌悪に濡れる。
『…嘘はついていません。本当の事を隠しているだけです』
「……あんた、変わってねぇのな。そういうとこ」
彼は少しだけ切ない表情をして、自分だけに聞こえる声量で 何かを呟いた。
「なぁ!今は、歌ってねぇの?俺、またあんたの歌聴きたい!」
また、彼の癖が出る。自分が強く興味を惹かれた物を、じっと見つめる あの癖だ。
『…もう、歌っていません』
「なんでだよっ、だってあんた、あの時はあんなに楽しそうに 歌って踊ってたじゃんか!
俺がどれだけ…あんたの歌に救われたか、全然分かってない…っ。なんでやめたんだよ!」
やはり、環は私の過去を知っている。楽と同じで、あの2年前のステージを観ていたのだろうか。
様変わりした今の私を見て、彼はLioだと見抜いた。ここまでハッキリと気付いた彼を誤魔化すのは不可能だろう。
『……私がLioをやめた理由を、貴方に話すつもりはありません』
「……は?Lioって誰だよ」
…………え?