第13章 プロデューサーさんまでカッコ良いんですね…
『だ、誰って…だって貴方、私が女だって知って…』
「それは知ってる」
『じゃあ、Lioとして歌っていた私を知ってるんじゃ』
「それは知らねぇ」
ど、どういう事だこれは。頭がこんがらがって来た。ならば彼は何故、私が女で、歌をうたっていた事を知っているのだ。
「っていうかさぁ、あんたは俺の事覚えてねぇの?
……えりりん」
『なんですか、そのふざけたアダ名は』
!!ちょっと…待て。私は知っている。
かつて その名前で、私の事を呼んでいた少年を!
ぐわっと、記憶の波が私に押し寄せて来る。
淡い海色の髪。ビー玉みたいな瞳。全ての大人が敵だと言わんばかりの冷めた視線。それに…常に手を繋いでいた幼女。
そうか、彼は…あの時の…。
『タマ…ちゃん、?』
「!!え…えりりん…、俺の事、思い出した…のか?」
彼のガラス細工のような瞳が、大きく揺れる。
そう。私は思い出した。
私と彼は、たしかに出会っていた。
あれは…もう何年前になるのだろう。私が中学生で。環はもっと小さかった。
出会った場所は…児童養護施設。
『久しぶりだね、タマちゃん』
「お…、おぉ!久しぶり!久しぶりだな、えりりん!」
そうか…
あの時の男の子が、こんなふうに笑うようになったのか。
私は勝手に感謝した。
彼の この笑顔に起因するもの全てに。
彼の今の仲間、そして彼を辛い過去から引っ張り上げる要因となった、全てのものに。