第102章 ŹOOĻ!ŹOOĻ!ŹOOĻ!
そこへ、休憩に入ってから初めて虎於が口を開く。
「明日、だな」
「どうされたんですか?そのような神妙な顔、あなたらしくありませんね」
「分かってる。俺も自分で驚いてるんだ。今まで、ライブ前にここまで身構えることはなかった。これが、緊張ってやつなんだろう」
虎於は、薄っすらと笑みを浮かべたまま続ける。
「明日もし、了さんを納得させるライブが出来なけりゃ俺達は…どうなるんだろうな」
4人は最悪を想像したのか、飲み物を片手に俯いてしまう。そんな中、一番最初に顔を上げたのは悠であった。
「分かんない。分かんないけどさ、オレ…明日のライブは、そういうの一回忘れる。
それで、観てくれる人を楽しませることだけ考えて歌うよ」
「悠…」
「亥清さん、良いことを仰いますね。勿論その、観てくれる人の中には了さんも含まれているのでしょう?」
「うん。それでオレ、了さんには…もう一度、アイドルを好きになって欲しい。
オレらのライブを観て、あぁやっぱりアイドルっていいなって、思って欲しいんだ」
険しい顔をしていた虎於は、その言葉に笑顔で頷いた。その隣で、巳波も微笑んでいる。トウマは、声を詰まらせながらも叫んだ。
「っ…よく言ったなハル!俺も同じ気持ちだ!明日は、絶対に何もかもが上手くいく!そうと決まればほら!景気付けに円陣組んで気合い入れようぜ!」
「いや、そういうのはいいや」
「え……えぇ?」
「悠の言う通りだな。そういうのは、レッスン室でやることじゃないだろ」
「狗丸さんは、円陣がお好きなんですね」
トウマの突き出した手の上に、誰かの手が重なることはなかった。
私は、ちらりと隣の男の様子を窺う。了は、顔色ひとつ変えずに言い放つ。
「こんな茶番見せられたからって、明日の結果が変わることは決してない。
明日はŹOOĻのライブ。明後日は、君のデビューライブになる。Re:valeは岡崎に戻ることはないし、TRIGGERもIDOLiSH7もいずれツクモに平伏すんだ」
私が何も答えずにいると、了は今度こそ廊下の向こうへ消えていった。