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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第101章 運命の相手には、いつ会えるか分からない




「まぁ、あまり気を落とさないことだね。男なんてこの世に山ほどいるしね。君の事を世界で一番想ってくれる人間も絶対いるから。例えばほら、僕とか」

『……』


見事に伏線を回収した千。全員が彼から目を逸らせた。何この空気 と、千は私にジト目を向ける。

そして、気付く。私の目の前に、書きかけの楽譜が置かれていたことに。
まるで当たり前のように、彼はそれを手に取った。


「へぇ、新曲か」

『あ。ちょっと、勝手に見ないでください!』

「……」


千には見られたくない。他でもない千にだけは。
いつだって真剣に曲と向かい合っている彼にはきっと、見透かされてしまうに決まってる。
いかにこの曲が “ 薄っぺら ” なのかを。


「なにこれ。最高にウザいな」

『ウザ…』

「本当に君が作ったのか、この駄曲を」

『駄曲…』


私がタコ殴りにされるのを、ŹOOĻの戦々恐々の顔付きで見守っていた。さきほどまでは、毒を吐きながらも笑っていた千。だが今はどう見ても冗談を言っている雰囲気ではない。そう。彼はマジなのだ。本気と書いて、マジと読む奴なのだ。本気で、駄目出しをしている。


「確かに曲を作るとき、自分の感情とか心境とかを織り込むことはある。でもこれは、あれだ。自分に酔ってて、自分だけが気持ち良くなっちゃう、オナニーと一緒だよね」

『ONANI — …』


トウマは、両手で顔を覆って嘆いていた。虎於は複雑そうな表情で、そんな彼に話し掛ける。


「…あの綺麗な顔でそういう言葉吐くと、すごい破壊力だな」

「俺に…振らないでくれっ」可哀想な春人…

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