第101章 運命の相手には、いつ会えるか分からない
「後は、春人ちゃんに会いに。
…例の話、聞いたよ」
千は、ぽつりと伏し目がちに言った。そんな彼に、私は間髪入れずに問い掛ける。
『え。な、なんで、貴方が知ってるんですか!?』
「……連絡網で回ってきた」
『私の知らないところでそんなものが!?』
その網が、他にどんな場所へ繋がっているのか気になるところだが。それよりも今は、驚きが勝る。いくらなんでも情報が早過ぎないか。
「私達も、さきほど聞き及んだところなんですよ。千さんは、情報が早いのですね」
「ふふ、まあね」
「でも、なんで春人が振られたら千さんがわざわざ会いに来んの?いや、来るん ですか」
「え?振られたって何」
千は目を丸くして、ぐるんと私の方へ顔を向けた。噛み合わない会話に、その場にいた者全員が口を噤む。
『え…と、なんですか、その、初耳です。みたいな顔は』
「だって初耳だから。なに、嘘でしょ。君 振られちゃったの?」
『いやでも、千さんさっき、自分で “ 例の話 ” を聞いたって』
「僕が言った例の話っていうのは、君が長髪で美人系でまるで僕みたいな男が好みだってことだったんだけど。ちなみに情報源は三月くんね」
確かに千は、長髪で美人系であるが、自分で言うのはどうだろう。
「あの…長髪で美人系でしたら、私も当てはまると思いません?良かったら、髪を触られますか?」
確かに巳南は、長髪で美人系であるが、自分で言うのはどうだろう。
というか、もし叶うのならぜひ触らせて欲しい。
『いやちょっと待ってください。ということは…』
「そうね。僕は君がフリーになったことを、たったいま知った」
悠は、オレがいらないこと言ったせいだ!みたいな顔をしているが、彼に罪はない。このタイミングで例の話と言われれば、誰だって勘違いをしてしまうだろう。