第101章 運命の相手には、いつ会えるか分からない
龍之介がトイレへと行き、部屋には俺と天の2人になる。今日は珍しく、口火を切ったのは俺じゃなかった。
「少し、意外だった」
「少しどころじゃねぇだろ。まさか、あいつらが駄目になるなんて全く予想してなかったぜ」
「そうじゃなくて。意外だったのは、キミの態度だよ。怒りに身を任せて、龍に掴み掛かると思ってた」
「いやいや、お前がすげえ剣幕で凄んだんだろ」
「よく言うよ。ボクの牽制なんて、いつも雑に躱すくせに」
天は、含み笑いをこちらに向けた。俺の胸中など、全て見透かしているぞ とでも言いたげに。
「いや…怒ったり、しねえだろ、普通…」
「怒るどころか、理由についても言及しなかったね」
「…しねぇよ」
「そう」
静かに瞳を閉じた天を見て、やっと一息付けた。これ以上こいつと目を合わしていたら、本当に心を読まれるのではないかと思っていたからだ。
俺が、龍之介と春人が別れた理由に触れなかった理由。それは…
ほっと したからだ。
あの2人が別れたと聞いて、驚きの次にやって来た感情は 安堵だった。
そんなふうに思った俺は、最低野郎だ。
その安堵感に自分で驚いて、居ても立っても居られなくなって。すぐ様 自分が原因になってないか確かめて。関わっていないと言わせて、また安堵して…
いつから俺は、こんなふうになってしまったのか。少し前までは、全てが上手く回っていたはずなのに。
気付かぬ内に、俺の中の歯車がひとつ、失くなっていたのだろうか。