第101章 運命の相手には、いつ会えるか分からない
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そのままの勢いで私を押し倒そうとした虎於を、押し戻した。そして、簡単にメイクを落としてウィッグを取り髪を軽く整える。いくら割り切っただけの行為と言っても、流石に男を抱かせるのは気の毒だから。
虎於の上に跨り、頭を左右に動かせば、ショートヘアーが無造作に広がった。彼は、黙ってこちらに見入っている。
『…すっぴんで申し訳ないけど、男の格好してるよりマシでしょ』
「何言ってるんだ。女は、素顔の時が1番綺麗に決まってるだろ」
『はは。さすが、モテる男は言うことが違』
「綺麗だ」
『……』
いま気付いたが、この姿を虎於の前に晒すのは初めてだ。まだ服も脱いでいないというのに、まるで裸を見られているみたい。そんな恥ずかしさを搔き消すように、私は背を丸めて自分から唇を重ねた。
虎於は、自分の上に乗る私の背中に腕を回す。そしてもう片方の手は、うなじをなぞった。指の腹がゆっくりとそこを伝う感覚に、身体がピクンと反応する。
『ん…っ!は…ぁ』
いつの間にかジャケットの中に侵入していた腕は、ブラのホックを外しにかかる。彼の指先が、その辺りを弄った。
「……?」
しかし、いくら探そうとある訳がない。だって、ブラをしていないのだから。
戸惑いの色を滲ませる虎於。私はジャケットを脱ぎ、シャツのボタンをいくつか外す。そして、さらしの端っこを男に握らせた。
「はは。そうか、成る程。こういうのは、初めてだな」
『そう。初体験、良かったね』
虎於は、ゆっくりと丁寧に私のさらしを外していった。