第101章 運命の相手には、いつ会えるか分からない
「馬鹿だな。龍之介は」
『馬鹿真面目なんですよ』
彼のことを悪く言われて、イラっと出来る自分に少しほっとした。
「俺なら、自分のことを好きだと言う女を手放したりしない。自分が気に入ってるなら、尚更な。
惚れた女の幸せを、他の男に託そうとした時点で負けてるんだ」
『…貴方と龍は違った。ただ、それだけのこと』
ただ ほんの少し本音を言うと、私も虎於と同じことを考えていた。これが龍之介の愛の形なのだと納得しようとしても、やっぱり私は彼の隣で幸せになりたかった。
だから、腹の奥で小さな炎が燻っている。大きな悲しさと、小さな怒り。
『人はきっと、こういう感情を “ ムシャクシャ ” と言うんでしょうね』
「ふ。あんたみたいな奴でも、そんな気持ちになるんだな」
『そうみたいです』
「知ってるか?その鬱陶しい感情の解消方法」
『正解かは分かりませんが、とりあえず仕事に打ち込もうかと思ってました』
「もっと手っ取り早い方法がある。
なに、簡単だ。忘れちまえば良い」
対面に座っていた虎於は立ち上がり、私の隣に座り直した。そして、間近から両の目を覗き込む。
彼がどういうつもりかなんて分かっていたけれど、一応問うた。
『どういうつもりですか』
「俺が慰めてやろうか?得意だぜ。好きだった男を忘れさせるのは」
ムシャクシャと、自暴自棄は、とても似ている。