第2章 …なぁ。俺達、どこかで会ったか?
「それにしても、あの社長がTRIGGERを全面的に人に任せるなんて…。ちょっと信じられないな」
『そりゃそうですよね』
それは私の台詞だ。
昨夜の社長としたやり取りが夢だったのではないか。と、未だに考えている。
『では、手っ取り早く 一緒に社長のところに行きましょうか』
「そうだね。俺も詳しい事情を聞きたいし…」
すんなりと信じられない気持ちは、重々理解出来る。
共に社長室へと向かうという事で話はまとまり、私と龍之介は 2人揃って歩き出した。
「おい親父!一体どうなってんだよ。きっちり説明してもらおうじゃねぇか」
「社長。ボクからもお願いします」
「なんだ、本人から聞かなかったのか」
「…まじかよ。本気で、ただの振り付け師に 俺達の命運任せるってのか」
「え?あの人振り付け師なの?」
私と龍之介が社長室に到着した時には、既に室内は盛り上がっていた。
入るタイミングを失い、ドアノブに手をかけたまま静止する。そんな私を、龍之介が憐れみの目で見つめている。
影でメンバーに全否定されている私に、同情でもしているのだろう。
『…お気遣いなく。これくらいは予想範囲内ですから』
私は彼に背中を向けたままで そう告げると、今度こそドアノブを回してドアを押した。