第101章 運命の相手には、いつ会えるか分からない
駄目だ。この人は、本気だ。本気で私の幸せを願っている。その上で、私を突き放そうとしている。私を見つめる双眼は、私を愛していると語っているというのに。
『龍も…私が、間違ってたって言うの?私が…貴方の隣を選んだことは、間違いだった?』
「間違いなはず、ないだろ?俺は君といられた時間、世界中の誰よりも幸せだったよ。こんな幸せが、間違いの上に成り立つなんて有り得ないから」
『…龍は、狡い。私は龍が好きで、龍は私を好きなのに。こんな悲しい別れは、ない。
愛すらなら、ちゃんと愛して。嫌になったなら、ちゃんと嫌ってよ。じゃないとこの想い、捨てられない。
私のこと捨てるなら、めちゃくちゃにしてくれないかな…もう精も根も愛想も全部、尽き果てるぐらい傷付けて欲しいよ!』
「エリ…」
龍之介の腕が、ゆっくりとこちらへ伸ばされる。どうかそのまま、いつもみたいに抱き締めて欲しい。貴方の胸の中で、慰めて欲しい。
しかし…その腕は、私に触れることはなかった。彼は自分の感情を抑え込むように、きつく目を閉じて腕を引っ込める。
そして、告げる。
「分かった…じゃあ、本当のことを言うよ。
俺に、君は…無理だったんだ。元アイドルで、男装したプロデューサーで、仲間の好きな人なんて。最初から、無理だった」
『…龍之』
「俺は、君に恋しちゃいけなかった」
きっとそれは、私がこの世で最も聞きたくなかった言葉。彼は的確に、その凶器で私の胸を抉った。