第101章 運命の相手には、いつ会えるか分からない
『…その言葉は、一度口にしたら もうなかったことには出来ないよ』
「分かってる」
龍之介は、しっかりと頷く。とっくに決心など済ませているのだろう。
そして私も、自分でも驚くくらいに冷静だった。近々こうなることが、分かっていたみたいに。
『とりあえず、理由を聞かせて。それが私も納得出来るものだったら、龍之介の言う通りにしてもいい』
椅子に着き、長期戦の構えを取る。私は、簡単に首を縦に振るつもりはない。それこそ、彼の方が私に飽きたという理由でない限りは。
「エリも、楽の気持ちには気付いてるよね」
『それは、まあ。でもそんなの、今に始まったことじゃないでしょ。龍と付き合う前から、分かってたことじゃな』
「そうじゃないよ。俺が言いたいのは、そうじゃない。君も、気付いてるはずだ。ただ、見ないふりをしているだけで。
楽は…春人くんにも、惹かれ始めてる」
私はぐっと、言葉に詰まる。しかし必死に、だからどうしたという表情を作った。
『今は、私と龍の話をしてるんでしょ。楽は、関係ない』
「本当に?」
『…何が言いたいの』
「Lioが好きだった楽が、エリを好きになって、今度は春人くんの存在にまで惹かれ始めた。
これだけ、愛されて…エリの心は、本当に動かないのか?」
カッと、顔に赤みが差すのが分かった。怒りからか、はたまた他の感情からなのかは分からない。
でも、平静を装うのはもう限界だった。
『私は、私が好きなのは龍なの!心から、愛してる!
ねぇ、どうしてこんなにも好きなのに別れようなんて言うの?私のこの気持ちが、愛が…龍には伝わってなかったの?』