第100章 お前、龍のこと好き過ぎだろ
色々あったが、この楽しかった宴会もいよいよ御開きとなる。楽しかったと、また集まりたいと、皆んな思い思いの言葉を口にしながら店を後にする。
私は何となく、龍之介の横に並び立った。他のメンバー達がドアから外へ出ていくのを一緒に眺めていると、彼が声を掛けてくる。
「さっき、楽と何の話してたの?」
『え。それは、色々?あぁでも、内容のほとんどが仕事の話だったん』
私が龍之介に唇を塞がれたのは、ちょうど店内が無人になったタイミング。パタンと閉まったドアの音が、やけに大きく聞こえた。
『え?えっと、龍之介、さん?』
「ごめん。すぐそこに皆んながいるのに、嫌だったよね」
まるで高校生よろしく、人前で見せびらかすようにイチャつきたがる男は、断じてごめんだ。しかし龍之介は、当然そういうことはしない。そのくらいの節度は持ち合わせている、大人の男だから。そんな彼が、一体どうしたことだろう。
『べつに、嫌ってわけじゃ。ただ、珍しいなって』
「どうしても、今したいと思ったんだ。ごめん」
勝手にキスをしておいて、どうして貴方は、そんなに悲しそうに笑うのか。何か大切なことを、決めた顔をしているのか。
私を置いて、貴方は1人で…どんな覚悟を決めたの。
『あ、謝らなくてもいい!うん!そういう時もあるよね。分かる分かる。なんなら、もう1回くらいしとく?』
神妙な面持ちの龍之介に、茶化すように言ったその時。無人なはずの店内なのに、すぐ近くから視線を感じる。恐る恐るその気配を辿ると、こちらを じーっと見ている壮五がいた。
「そ、壮五くん!?先に店から出たんじゃ」
「おトイレ行ってて。えへへ、ラブラブ〜」
『み、見た?』
「ふふふ。ちゅうしてた!いいなぁ〜。はぁさんたち、仲良しいいなぁ」
壮五にそう言われた龍之介は、困ったように笑った。だがその笑顔に やはり影があるように見えるのは、私の気のせいではないはずだ。