第100章 お前、龍のこと好き過ぎだろ
あぁ駄目だ。やはり彼の隣は、心がザワザワする。
「俺とは目も合わせられないってか」
『いや、べつにそんなことは』
ちらりと盗み見ていたのがバレてしまった。楽は大層不服そうに、不満をぶつけた。ここで視線を外しては、何だか全てを認めてしまうみたいで悔しい。私は、楽と向き合った。
それにしてもこの男…こんなに美しい顔の造形をしていただろうか。いや、していたのだろう。彼の顔は何も変わってない。
では、変わったのは一体 なんだ?
「今度は睨むのかよ。なぁ、俺あんたに何かしたか」
何かした。どころの話ではない。
貴方はLioを愛し、そしてエリまでも愛した。その上、今度は…
どうして、春人にまでそんな熱い視線を向けるのだ。
「春人、何とか言え。頼むから」
あぁ、そんなふうに熱のこもった声で私の名前を呼ばないで。
私の “ 正解 ” が、ここにあると考えてしまうではないか。
『…そろそろ、私達もあちらへ戻りましょうか』
「は?いや。ちょっと待て」
『私に何か話があるんですか?』
「あ、ある」
『どんな話でしょう』
楽は口を開けるも、出てくるのは あーとか、うーん、だけ。明らかに、いま話を考えている。
「えー…あ!最近、どうだ」
『絞り出した話題がそれですか』
「うるせえ」
『そこそこですよ。ŹOOĻのメンバーは、よく頑張ってくれています』
「そうか。で?お前は?」
『上手く立ち回るつもりが、了には喧嘩を売ることが多くなってしまっていますかね。結果、激昂した彼が どんな行動に出るか分かりません。姉鷺さんには警護を強めるよう言ってありますが、貴方達自身も行動には気を付けておいてください』
「…仕事のことになると、よく喋るんだな」
楽は嘲笑と共に、そう告げた。