第100章 お前、龍のこと好き過ぎだろ
万理と再会して まだ間がないとき、彼に言われた言葉がある。
“ もう、間違わないでくれ ”
【75章 1777ページ】
幸せになる為に。仕事も恋も、その両方を掴む為に、私はこの言葉を常時胸に置いて歩いて来たつもりだった。
『私は…また、間違った?』
「いや、そう決め付けるのはまだ早いんじゃないか?でも」
『そう、だよ。私は、間違ってない。この気持ちに嘘なんてない。龍之介を、ちゃんと愛してる。これが恋愛感情じゃないなんて、ありえない!』
どうか首を縦に動かしてくれと、願うような気持ちで彼に言葉を浴びせた。しかし万理は、私を甘やかしたりしない。
「でも、間違ってないと決め付けるのも危ない。本当の正解が見えなくなるから。だから1度、少し立ち止まって考えてみてくれないか?自分は間違っているかもしれないと、ほんのちょっと疑ってみるだけでいい」
取り乱しかけた私に、万理は明るく努める。笑顔を浮かべ、何も怖いことはないよと諭してくれているみたいだ。
「難しいことは何もないよ。大丈夫さ。得意だろ?いつもみたいに広い視野を持って、自分を客観視するだけだ」
『どう、なんだろう。私、あんまり本気の恋愛ってしてこなったから…経験値が圧倒的に足りてない気がする』
「あー…確かにそうかもな。初めての彼氏が高校で、お前付き合い出してからガッチガチだったし」
『ば、万理だって、キスのひとつもして来なかったくせに!』
「しようとしただろ!?人の気も知らないで、お前がカモシカみたいなスピードで逃げたんだ!あの時 俺がどれくらい傷付いたか!」
万理と思い出話に花を咲かせている間も、私の胸に刺さった棘はチクチクと、小さな痛みを与え続けていた。