第100章 お前、龍のこと好き過ぎだろ
そのような経緯を経て、王様ゲームは終了した。再び場は、宴会モードに戻る。
「「「おまーえはっ、もうーー??」」」
「グッナーーイ!!」
三月、楽、龍之介が声を合わせて歌唱し、大和もまたノリノリで歌い返す。まさに、飲めや歌えの大宴会とはこのことだ。私も天も、ヘロヘロの壮五も、涙が出るくらいに笑うのだった。
酒が進めば、近くなるもの。それは尿意である。私はそっと、黙って席を立つ。すると、ぐいっと袖口が強く引かれた。そちらの方を確認すれば、顔を赤らめ上目遣いで見つめてくる壮五がいる。
「はぁさん?どこ、行っちゃうの?」
『え?普通に、トイレへ』
「やだ、行かないで〜」
『へっ』
「そのまま、帰って来ないかもしれない…うぅ〜」
なんだ、この可愛い生き物は。酒を飲むと、気が大きくなったり泣いたり笑ったりするのは よく聞く話。しかし、こんなふうに寂しん坊になってしまうタイプは珍しいのではないだろうか。
というか、やはり可愛い。
「ほら、ワガママ言わないの。うちのプロデューサーが膀胱炎になったら困る」
「てんてん…でも」
「大丈夫。ボクが隣にいてあげるから。平気でしょ?」
「!! うん!えへへ…」
天は、今のうちに。と私に目配せをした。お言葉に甘え、そそくさと御手洗いへと駆け込んだ。
きっと天は、幼い頃からあぁだったのだろう。大切な弟を、あぁして守ってきたのだろう。意図せず、彼の生い立ちが垣間見えた瞬間であった。