第13章 プロデューサーさんまでカッコ良いんですね…
「よ、っと」
ヘルメットを被ってから、環も私に続いてバイクを跨ぐ。
『行きますよ。しっかり掴まっていて下さいね』
「りょーかい」
そう言うと彼は…言葉通り、しっかりと掴まる。私に。
『ちょ、』
ちょっと、これは掴まり過ぎでは…?もはや掴まるという域を超えて、抱き着くに近い。
ぴったりと背中にくっつく環の胸板。腹部の前でしっかりと回された腕。
何か言おうかと思ったが、やっぱりやめた。背中に伝わってくる彼の心音が、あまりに平常運転だったから。
これでは、意識している私だけが無様だ。
私は、特に予告をする事無く アクセルを回す。
「ぅおっ、!」
私の前で組まれた腕が、びくりと動く。
『……』
とりあえず、あまりこの場から離れたくないから この辺りを適当にグルリと回ろう…。どうせなら、比較的スピードが出せる幹線道路に出て…
「うおー、すげー!超はえー、きもちー」
『?なんですか?』
そこそこのスピードで走るバイクで2人乗りをしているのだ。相手の声はかなり聞こえづらい。
私は前を見たまま、体だけ後ろへ傾けてやる。
「だからー」
彼は、より私と密着して 耳元で言葉を紡ぐ。
「超気持ちいいって、言ってんの」
環の甘い声が、私の耳をくすぐる。
『そ、れは…良かったです』
私はすぐに姿勢を正すと、運転に集中する。決して動揺などしていない、と言わんばかりに冷静を装う。
そう。別に、彼の言葉が ちょっと卑猥だったとか、耳元で聞いた声がエロいとか。そんな事は決して思っていない!