第13章 プロデューサーさんまでカッコ良いんですね…
ヤマさん…というのは、おそらくIDOLiSH7メンバーの 二階堂大和 ことだろう。
環の事だ。きっとここでもメンバーに可愛がられているのであろうと、容易に想像出来た。
1分としない内に、待ち人の姿が現れる。嬉しそうにこちらへ駆け寄ってくる姿は、さながら大型犬だ。…可愛い。
『…お待たせしてすみませんでした。早速どこか、落ち着いて座れるところへ行きましょうか。
ファミレスか…この時間でもやっている喫茶店は…。って、四葉さん聞いてますか?』
私の話を聞いているのか いないのか。全く反応が無いので分からない。
「これ…っ、あんたの!?」
爛々とした瞳で彼が見つめるのは、私のバイクだった。
『そうですよ。車よりも小回りがきいて 便利なのでバイクを使っているんです』
「俺も乗りたい!!」
『え』
たしかに、念の為にヘルメットは積んでいるのだが…。出来れば近場の店で 早急に話を進めたい。
「なぁ!…乗せて!」
こんなにも純粋な顔で頼まれては、仕方ない…。
『…分かりました。ちょっとだけですよ』
「やりぃー」
嬉しそうに備え付けのヘルメットを受け取る環だった。
その時。私はふと誰かの視線を感じて、その気配の先へ顔を向ける。それは、小鳥遊寮の窓だった。
『……』
たしかに人影があり 目が合ったはずなのだが。私達を見ていたその誰かは すぐに隠れるように姿を消してしまった。
まぁ、それがメンバーにしろ事務所の人間にしろ、こんな時間から環を連れ出す輩を見ておきたい。そう思うのは自然な事だろう。
「ん?何かあった…?」
『いえ。特に』
私は特に気にする事なく、バイクに跨った。