第100章 お前、龍のこと好き過ぎだろ
そのすぐ後、壮五は空いた天の隣へ移動した。そしてなんと徐に天の手を握り込み、顔をぐっと近付けて始める。
「てんてん、だぁい好き。愛してる〜」
「……」
「愛してるよ〜」
「ねぇ。何これ」
『だから…愛してるゲームでしょう』
「もうこれ、逢坂が優勝で良いんじゃねぇか」
「優勝とかないから!」BLは求めてねぇんだよ!
大和は、はい次!と続けた。席を元に戻し、ゲーム再開。
お次に当たりを引き当てたのは…龍之介だ。
「うわあ!俺だ!」
「ふふ。キミが愛の告白をするのは誰になるのかな」
「うーん、じゃあ1番!」
『あ、私です』
「え」
1と書かれた割り箸を、私は皆んなに見えるよう持ち上げた。
「あーはいはい。じゃあさっさと済ませてもらえます?」
「いや大和さんなんで急にテンション下がってんの」
ギギギ…と、錆び付いたロボットの如くこちらを向く龍之介。私は和かな笑顔で、言葉を待った。
「う…でも…その」
『ほら、たった5文字ですよ。頑張って』
2人の時でさえ、そういう言葉は軽々しく口にしない龍之介。きっと、愛の言葉は大切で重要なものだと考えているからだろう。そんな彼に、人前で愛を語れとは例えゲームであってもハードルが高い。
「あ…あい…」
『愛?』
「っ…!ごめん!やっぱり無理だ!こんなの皆んなの前で言えないよ!」
「十さん顔真っ赤じゃないですか!あははっ、なんか可愛い!コレコレこの反応だよ!愛してるゲームやってるって感じするなぁ」
三月に揶揄われる龍之介は、顔におしぼりを当てて小さくなる。
「うぅ…だってほら、やっぱりこういうのは…2人きりの時に言うものじゃない?」
「2人きりの時に言ってた方が問題ですけど!?」
龍之介は、あ、しまった。と顔を上げる。天も楽も、そして大和も、口を滑らせた彼を盗み見ていた。
そこで私は、口を開く。
『2人きりの時も、滅多に言ってくれないくせに』
「ち、ちょっ、春人くん!?」
「え…、え?ちょっと待って何この展開」
誰に助けを求めているのか、三月はぶんぶんと顔を左右に動かした。