第100章 お前、龍のこと好き過ぎだろ
楽しい時間は過ぎていく。
バーカウンターに入り、全員分のワインとチーズを用意する龍之介を、イケメーン!と全員で持ち上げたり。
1人離れて座る万理に、こちらへ来るように促したり。ちなみに彼は、俺は運転手で付き添いだからと、席を変えることはなかった。
良い感じに場の温度が上がってきた頃、ほろ酔いの大和が懐から割り箸を7本取り出す。1本は先が赤く塗られており、後の6本は1から順に数字が振られている。
これを見れば、彼がこれから何を提案するのか想像に容易い。
「じゃーん。お兄さん、こんなモノ用意しちゃってました!」
「あんた、これ寮から持って来たのか?どんなけエンジョイする気満々だよ!」
「うふふ、ふふ、ゲームゲーム…」
なんだか壮五の様子がおかしいような気もするが、大丈夫だろうか。
「酒の席で王様ゲームかよ。男ばっかの宴会で?」
「これ見て王様ゲームって思っちゃう八乙女、意外と底が浅いなぁ」
「悪かったな!あと嫌な言い方すんな!」
私も王様ゲーム一択だと思っていたことは、黙っておこう。
「じゃあ、何を始めるつもり?」
「ふ、よくぞ聞いてくれた九条。最近、巷で大流行中の…愛してるゲームだ!」
「なに?そのゲーム」
「ありゃ知らない?いかに照れずに面と向かって、愛してるって言うゲームなんだけど。
いやこれが、おねぇさん達のいる店でやると受けるのなんのって!」
とてもとても楽しそうな大和は、割り箸を振り振り説明する。
黙っていればよかったのに、私はついポロリと零してしまう。
『そういうお店、行かれるんですね』
「…おんやぁ?春人ちゃんは、そこ気になっちゃう感じ?俺がそういう店行こうが、あんたには何の関係もないでしょ。もしかしてそれって、ヤキモ」
『確かに何の関係もないですね。どうぞご自由に』
「うそうそ嘘だって!アイドル業始めてから全くこれっぽちも行ってないんだって!だからそんな冷たい目でこっち見ないで!」
「大和さん、何そんな必至になってんだよ…」
そんな私達を、万理は少し離れたカウンターから見つめていた。そのニヤニヤした顔付きは “ 早く愛してるゲーム始まらないかな ” に違いない。