第100章 お前、龍のこと好き過ぎだろ
その時。私は彼越しに、ある場所を見つけていた。そこは、スポットライトの降りる小さなステージ。おそらく、酒をやりながら音楽も楽しむことが出来る仕様なのだろう。バーには比較的よくある、小さなステージなのだが。その場所からは神秘的な何かを感じて、私はじっとそこを見つめていた。
すると、天がステージを指差して私に問い掛ける。
「あそこ、気になる?」
『え、あぁ…そうですね。なんとなく』
「あそこはね、ボク達が生まれた場所。ボクらが、TRIGGERに恋をした場所」
彼は、優しく語って聞かせる。雪の降るある夜、このdeep RIVERに3人が集ったこと。あのステージで互いの存在を確かめ合ったこと。TRIGGERが、本当の意味で誕生した瞬間のこと。
楽は目を細め、天の話を聞いていた。龍之介は、マドラーを動かす手を止めて口を開く。
「懐かしいなあ。つい こないだみたいな感覚だけど、随分時間が流れたね。
でも気持ちはあの頃と、何一つ変わってない」
「そうだね。ここはボクらにとって、とても大切な場所」
「あぁ。そんなTRIGGERにとって大切な場所に、いつかあんたを招待したいって、3人でずっと話してたんだ」
『そう…だったんですね』
私は改めて、奥にあるステージを見やる。すると、無人の中で生き生きとステップを踏む3人の姿が容易く想像出来た。
『そんな場所に呼んでもらえて、嬉しいです。ありがとうございます』
「春人くん、いつも頑張ってるから そのご褒美。今日は、俺達が存分に もてなすからね!」