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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第100章 お前、龍のこと好き過ぎだろ




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目的地が近くなり、バイクを停めて歩きで現地へと向かう。告げられた住所は、この辺りだ。
辺りを見回しながら歩いていると、地下へと続く階段が ふと目に留まった。どことなく不自然で、この辺りには似つかわしくない。暗がりの奥を覗き込めば、どうやら火が灯っている。階段の前に立てられたサインボードの英文字を、私は拾い上げた。


『deep RIVER…』

「待ってたよ」


闇に溶けるかと思われた私の独り言に、天の涼やかな声が返ってきた。そちらの方に顔を向けると、天の隣には龍之介と楽の姿もあった。階段の中腹に立つ3人に、語り掛ける。


『本日貸切と書いてありますが、どうやら場所はここで間違いないようですね』

「うん。お疲れ様、春人くん」

「あんたの為に、貸切にしてもらった」

『それは贅沢ですね。お招きいただき、ありがとうございます』

「今日は、キミはゲストだから。
手を引いて、エスコートしてさしあげましょうか?」

『ふふ。お気持ちだけで大丈夫です』


私は、笑みを零しながら階段を降り始める。天は肩を竦め、それは残念と笑った。

案内されたその場所は、まさに隠れ家という名に相応しい落ち着いたバーだった。貸切とは言え、マスターくらいは居るものだと思っていたのだが、中は完全に無人。龍之介が、自然な流れでバーカウンターの中へ移動する。


『私がやりましょうか?』

「いいよ。さっき天も言ったろう?今日は春人くんがゲストなんだから!ほら、ゆっくりしてて」


龍之介が言うと、楽は私に椅子を勧めた。言われるがままにカウンターに着き、私は改めて店内を見回す。それから、隣に腰を下ろした楽に向かって呟いた。


『本当に、こんな贅沢はないですね』

「それはさっきも聞いた。でも、それだけ喜んでもらえたら店を貸し切った甲斐があったよ」

『いや、貸切も贅沢と言えば贅沢ですが…私がいま言ったのは、大好きなTRIGGERに接待してもらえることに対してですよ』


瞳を大きく揺らした楽だったが、照れ臭そうにすぐそっぽを向いた。

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