第100章 お前、龍のこと好き過ぎだろ
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一方。ŹOOĻは1ヶ月後のライブに向けて猛トレーニングに励んでいた。4人からは、これまでの不真面目さなど微塵も感じられない。それもそのはず。次のライブの出来次第で、彼らの今後の命運が分かれるのだから。
今日はこの辺で終わりにしようと申し出た私に、不服そうに唇を尖らせる悠。
「まだ6時半じゃん。いつもなら、こんな時間じゃ絶対帰してくれないくせに」
『今日はこれから予定があるんです』
「なるほど、ご予定が。もしかして、TRIGGERの方々とお約束があるのでしょうか?」
『何で分かるんですか!?』
「ふふ。お顔に書いてありますよ。随分と、締まりのない顔をされていましたから」
私は、自らの頬に手をやった。そんなに腑抜けた表情をしていたのだろうか。どうやら、自分で思っていた以上にTRIGGERの誘いに舞い上がっていたらしい。
そんな私を前に、4人はどこか むすっと頬を膨らませ、不平不満を隠しもしない。
「大事なライブまでもう日がないんだけど!オレらのマネージャーであるあんたが、そんなふうに他所でフラフラしてて良いと思ってるわけ!?」
「…どうしてでしょう。この不思議とモヤモヤしたものが胸に溜まるのは」
「これは…あれだな。自分と付き合ってる女が、元恋人に会いに行ってくると嬉しそうにしてるのを目の当たりにしているような感覚じゃないか?」
「お、俺は…懐の深い男だからな!べつに…元カレのところ会いに行ったりするの、いちいち咎めたりしないから!あぁ、うん…だから、あんたの好きにしたら良いと思う…」
『私、べつにTRIGGERと別れた訳じゃないんですけど』
唖然とする彼らを放置して、私は一礼してからレッスン室を放置した。
扉を閉めるや否や悠の発狂が聞こえたが、当然聞こえなかったふりをした。