• テキストサイズ

引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第99章 間違ってると思ったことは、間違ってるだろってそう言いたい




『彼らはね、アイドルにとって大切なものを沢山持っているんです』

「くだらないけど、聞いてあげるよ。
アイドルにとって大切なものって?」

『共に切磋琢磨するライバルを、心の底から愛おしいと思えること。自分達の為に、見えない所で駆けずり回ってくれるスタッフへの感謝。どんな時も応援してくれるファンに、何かお返しをしたいという優しさ。大切な仲間と共に、ずっと歌っていたいという強訴なまでの欲求。

そんな彼らですよ?どうして…本物のアイドルにしてあげたいと、思わないでいられますか』


自分でも気付かぬうちに、私は笑みを浮かべていたらしい。それが、さらに了の機嫌を損ねる結果となってしまったようだ。彼は、テーブルの上にあったグラスを荒々しく投げ付けてきた。すぐさま腕でガードをする。きっと、ガラスは割れ水は体を濡らすだろう。しかし そんなもので彼の気が済むなら、甘んじて受けよう。
と、思ったのに。水色の頭が、私の視界を遮った。


『!?っはる』

「っ……、」


予想通りグラスは砕けてガラスに変わり、そして中身は悠の体をしとどに濡らした。なんとか両腕で受けてくれたのが幸いし、どこも切れてはいないようだ。真っ先に反応出来た巳波が、悠の髪にハンカチを滑らせる。


「亥清さん。大丈夫ですか?」

「う、うん。平気」

「あはは!馬鹿じゃないの?自分から突っ込んで来るなんてさ!顔に傷でも出来ちゃったら困るだろう?だって君は、アイドルなんだから!」


これには、流石にトウマと虎於の顔色も変わる。しかし、2人は歩みを進めなかったし声も上げなかった。何故なら、悠が先に口を開いたから。
髪の先から雫を落としながら、彼はしっかりとした口調で告げる。


「ごめんね、了さん」

「は?」

「オレ達、あんたとの約束を破る。
もう、使い捨てアイドルなんてやめる。それでこれからは…本物の、アイドルを目指すよ」

/ 2933ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp