第99章 間違ってると思ったことは、間違ってるだろってそう言いたい
「了さん。俺達は…全員で歌うことに決めた。4人で決めたんだ。だから、了さんにも応援して欲しい」
トウマは言い切った。蛇のように縦に割れた瞳孔が、キロリと彼を睨み付ける。しかしトウマは、蛙のように縮こまったりしなかった。他の3人も、了を前に怯んだりしない。恐れや、これから先に待ち受ける困難よりも、彼らの決意の固さが上を行ったのだ。
私達は全員で、ただ黙って了の返答を待つ。
「…うーーーん。どうしちゃったの?少し前まで、君らは優秀な駒役が出来てたじゃないか。ŹOOĻのプロデューサーである僕を抜きにして、勝手に変わらないで欲しいなぁ。
あぁ…違うか。うん。そうだ。ŹOOĻをこんな阿呆に変えてくれたのは…君だ」
矛先が、こちらに向いてくれるならありがたい。いくらŹOOĻの結束が固くなったとはいえ、彼らは実は地がナイーブだ。彼らの心が見えないナイフで切り刻まれるくらいなら、私を刺してくれた方が良い。
それに、しばらく彼に付き従っているおかげで、この脅迫じみた攻撃にも耐性が出来てきた頃だ。まるで、少量ずつ服用し続けてきた毒が、徐々に効かなくなってくるように。
『いえ。彼らは私が居なくても、いずれ変わってくれていましたよ。もし私が役に立てたなら、それは新生ŹOOĻに至るまでの時短くらいのものでしょう』
「あっはは!謙遜しなくてもいいのにー。でもやっぱり、理解が及ばないな。どうして君は、この変化を是と捉えるのか。
君の最も愛するTRIGGERの、邪魔になるとは考えないのかな?ただの使い捨てアイドルとしてのŹOOĻが、都合良いんじゃない?」
『そうですね…
もしも、彼らが本物のクズだったなら…貴方の言う通り、TRIGGERの為ŹOOĻを顧みることはしなかったかもしれません。ですが…彼らは、クズじゃなかったから』