第99章 間違ってると思ったことは、間違ってるだろってそう言いたい

「なんだよ。軽いジョークだろう」

「いいや違った。俺には分かる」

「あぁもう、そんなことよりさー、2人も早くしてくれない？2人だって、春人にありがとうって言いたいことあるでしょ？」

「え……」

「あらあら。これ、そういう流れです？」

「はぁ！？当たり前じゃん！オレとトウマにだけ、明日恥ずかしい思いさせるつもり！？」


悠の突き立てた人差し指が、虎於と巳波を交互に指す。すると、虎於は照れ臭そうに頬を掻いて口を開いた。


「まぁ、そうだな…じゃあ」

「私のことを、ノースメイアに送り出してくれたこと。今では感謝しています。貴方のおかげで、大切な人を見送ることが出来ましたから。あの節は本当に、ありがとうございました」

『い、いえいえ。とんでもないです。むしろあれは、こちらの我儘で…』


まさか巳波から、こんなふうに真っ直ぐ感謝の言葉を向けられるとは思ってもみなくて。私はたじたじしてしまう。


「…おい。どうして俺の言葉を遮ったんだ。今のは完全に俺のターンだっただろ」

「え？だって、1番最後が1番恥ずかしいじゃないですか。
さぁ、御堂さん。どうぞ遠慮なく、トリを飾ってください」

「…お前な」


強制的に、ラストを任されることになってしまった虎於。巳波の清々しい笑顔を、信じられないといった表情で見つめていた。
しかし。覚悟を決めたのか、それとも抵抗すら面倒になったのか、やがて彼は私に向き直る。


「俺達を、ŹOOĻを…初めて本気で愛してくれたのは、お前だ。ありがとう。春人」