第99章 間違ってると思ったことは、間違ってるだろってそう言いたい
「俺は…正直言って、めちゃめちゃ触発された」
「…トウマ」
「狗丸さん…」
「俺も、あんなライブがしたい。全力で歌って、踊って、見てくれる人を楽しませたい!
それも、他の誰でもない…お前らと一緒にだ!」
叫ぶように、自身の気持ちを訴えるトウマ。受け止めた2人は、驚いたような、戸惑ったような、複雑な表情をしていた。
昼間はキラキラと光を湛える水面だが、この時間はただ真っ黒で。見ているだけで不安になってしまう静かな闇に、トウマの叫びは吸い込まれていく。
しかし彼は、そんな痛いくらいの沈黙と、深い深い闇にも負けず続ける。
「それで…ŹOOĻを、TRIGGERすら超えるアイドルにしたいと思ってる!
2人は…どう、思う?」
「どう、って…言われてもな…」
「狗丸さん。お気持ちは、よく分かりますよ。あんなライブを見せられた後です。そのような感情が沸き起こるのは、何の不思議もありませんから。ですが、お忘れじゃ…ないですよね。
仮に私達が、TRIGGERのように最高の魔法をファンの皆さんにかけられるアイドルに昇華したとしても。その魔法は…
3年経てば、解けてしまうんですよ」
冷酷に告げる巳波は、まるで既に魔法使いのようであった。虎於は悲痛に歪めた顔を、川向こうに投げる。トウマは、悔しそうに手摺をぎゅっと握り込んでいた。
その時。私の隣にいる悠が、突如として立ち上がる。彼の表情は、何か覚悟を固めたみたいに見えた。そんな顔をされてしまえば、もうその背中を見送るしかない。