第99章 間違ってると思ったことは、間違ってるだろってそう言いたい
結局、悠の言った通りになった。私達はトウマの後を追って来たのだが、彼が足を止めた場所には虎於と巳波が既に立っていたのだ。
鉢合わせてしまった3人は、気不味そうにしながらも立ち去りはしなかった。
ここは、川沿いの遊歩道。川の向こうには、さきほどまでTRIGGERがライブを行なっていたゼロアリーナが臨める。3人は並んで、未だ眩い光を放つ会場を見つめていた。
そんな彼らを草葉の陰から観察しながら、私達は抑えめな声で会話する。
「やっぱり。ここに来ると思った」
『どうして分かったんですか?』
「べつに、なんとなく。
…オレも、なんだか真っ直ぐ帰りたくない気分だったから。もし寄り道するんだったら、ゼロアリーナが綺麗に見えるここに来たと思う」
『そうですか』
一体ここで、彼らはどんな会話を繰り広げるのだろう。私と悠は、息を殺して耳を澄ました。
「…2人も、ここに来たんだな」
「俺は、たまたまだ。風に当たりながら歩くには、この川沿いの遊歩道がちょうど良くて…だな」
「右に同じです」
「そ、そっか。俺はてっきり、TRIGGERのライブに触発されてゼロアリーナから離れ難くてこの辺りをウロウロしてるのかと」
「そんなこと、この俺が思うわけがないだろう!…まぁ、あのライブのクオリティが高かったことは認めるが…」
「右に同じです」
「おい。巳波。お前はさっきから、なに楽をしてる。俺の真似ばかりしてないで自分で喋ったらどうだ」
私は、隣にいる悠の反応をちろりと窺った。彼は眉根を寄せ、苦々しい顔をしながら呆れの溜息を吐く。
「はぁ…。なに、あの意味のないチグハグな会話!あの3人、大人のくせにさ、オレがいないと本当に駄目なんだよなぁ」
『ふふ。そうかもしれませんね』