第99章 間違ってると思ったことは、間違ってるだろってそう言いたい
「あぁ……夢みたいな、時間だった…」
トウマは、未だライブの余韻から抜け出せぬ様子で呟いた。その言葉に、虎於もまた同じような顔付きで答える。
「同感だな…出来ることなら、まだあの場に立っていたかった」
「オレも。やっぱ、TRIGGERって…凄いんだな」
そんな惚ける3人に背を向けて、巳波は私に問い掛ける。
「…TRIGGERの楽屋へ、顔を出さなくても良かったんですか?貴女、何か声を掛けたかったのでは?」
『いえ、大丈夫ですよ。私には、まだ貴方がたを自宅まで送り届けるというお仕事が残っていますから』
そう伝えると、トウマがおずおずと右手を軽く上げる。
「あー…ありがたいんだけど…今日は俺、歩いて帰るわ」
『歩いて?』
「奇遇だな。俺もそうしようと思っていた。なんだか少し…歩きたい気分なんだ」
「私も、そうします」
神妙な面持ちで、進言した3人。彼らがそう希望するなら、強く止めはしない。
「じゃあ、オレもそうす」
『いいえ。悠は駄目ですよ』
「は?なんで」
『貴方はまだ高校生。もう遅いですし、私が車で送ります』
「なんだよケチ!今までそんなこと言わなかったじゃん!」
子供扱いされ ぷりぷりする悠を、宥める3人。
やがて彼らは、言葉通り歩きで会場を後にした。それぞれ、三者三様の方向に。
私は手を振ってそんな背中を見送りつつも、隣の悠に声を掛ける。
『それで…誰を尾けます?』
「…オレは高校生だから、早く家に帰さなきゃいけないんじゃなかったの?」
『まぁそう固いことを言わず』
「ま、いいけど。
それに、誰を尾けたって一緒だよ。どうせ、同じ場所に行き着くに決まってる」