第99章 間違ってると思ったことは、間違ってるだろってそう言いたい
リハを見て知っているとは言え、やはりあの登場シーンは楽しみである。
無人のステージ。3人が順に現れた瞬間は、やはり大いに盛り上がった。当たり前だが、客席に向かってマイクが飛んで来ることもなく。
いつも通りの、最高で、最強に格好良いTRIGGERが舞台で舞い歌う。
目を開いたまま極上の夢を観られるのは、世界で唯一ここだけじゃないかと思わせてくれる。どうしたって、この感動を言葉に表すことなんて不可能だ。
いつも自分が生きている場所とは、全く別の世界線を覗いているかのような、この感覚。
あぁ…やっぱり。TRIGGERは、凄いな…
「あぁ…すごい、な」
『悠?』
「…九条はさ、オレにも人にもいつもキツくって厳しいことばっか言う奴だけど…。でも、多分あいつが1番厳しいのって、自分に対してなんだよな」
『そうですね。天は、そういう人です』
「うん。だから…あんなに、カッコイイんだろうな」
目の前にある手摺を、両手でぎゅっと握りながら彼は言った。唇を噛み、目付きを鋭くして、彼は続ける。
「でも、オレだって負けない。努力して追い付いて、それでいつか絶対に…追い越してやる!」
『…はい。私もお手伝いしますよ。頑張りましょう』
悠はしっかりと頷いた後、再び視線を前へと戻した。
私は、隣に立つトウマの方に顔を向ける。彼は、瞬きも忘れてステージを食い入るように見つめていた。邪魔をするのは憚られたが、私は意を決して声を投げる。
『トウマ、どうです?測れました?貴方達と、彼らの距離は』
「…正直、定規を放り投げたい気分だな」
投げやりなように聞こえる言葉だが、そう言う彼は笑っていた。頭の中では、ŹOOĻが一丸となりTRIGGERを懸命に追い掛けるヴィジョンが浮かんでいるのではないだろうか。