第99章 間違ってると思ったことは、間違ってるだろってそう言いたい
定刻間近となり、私達は会場へと足を運んだ。念の為にマスクや眼鏡で変装らしきことをしているものの、正体は隠し切れない。もしも普通の客席だったならば混乱が起きたかもしれない。しかしここは関係者席だ。一般人とは少し違った人達が集まっているから、少し騒ついただけで収まった。
左隣の悠が、緊張の面持ちで心臓の上に手を置いている。
『分かりますよ。心臓が逸りますよね』
「うぅ…なんだろ。いつもより鼓動が早くて…なんか落ち着かない」
『あぁそれはね、ワクワクしてるって奴ですよ』
「……ワクワク」
悠は考え込むような表現をしてから、ステージの方へ顔を向けた。
右隣のトウマも、真剣な顔をして前をしっかりと見据えている。
『トウマ?やっぱり、TRIGGERのライブを観るのは気が進みませんか?』
「あ、いや…そういうわけじゃ、ねえけど。でも、気が進んでも進まなくても、俺は観るよ。もう逃げないって決めたからな。
真正面から奴らのステージを観て、俺達との差が現時点でどれくらいなのか、ちゃんと見定める」
そう言い切った彼の顔付きは、紛れも無くŹOOĻリーダーのそれであった。
お手並み拝見ですね、と余裕を見せる巳波も、悠然とした横顔の虎於も。やはりどこか落ち着かない様子だった。
私が今日この場に彼らを誘ったのには、2つの目的があってのことだ。
まず1つは、TRIGGERのハイクオリティなライブを生で観てもらいたかったから。3人に触発され、自分達の今後に活かしてくれたらとの思惑だ。
そしてもう1つは…ŹOOĻが犯した罪の重さを、自覚してもらう為。
どれほど価値のあるものを自分達は汚したのか、実際にその目で見定めてもらう。