第99章 間違ってると思ったことは、間違ってるだろってそう言いたい
会場の扉から出たところで、3人は私達を待っていた。そして最後に出て来た姉鷺に連れられて、廊下を行く。
私達の為に用意してくれたのだという待機場所へ向かう中で、私は1人考える。
最近、龍之介が私に話してくれた。楽の様子が少しおかしいと。それを聞いた時は、ピンと来なかったのだが、さきほど実際に目の当たりにして確信した。やはり、それは龍之介の気のせいではなかったのだと。
「はぁ…本当にあの子、どうしちゃったのかしら」
『楽のことですか?』
姉鷺はŹOOĻに聞かせることを嫌がってか、私だけがギリギリ拾える声で零した。
「えぇ。仕事はきっちり熟してくれてるけど、ぼーっとしていることが増えたような気がするのよ。それに、龍之介との会話もなんだか随分と減ったような…」
『……』
「楽がそうなった理由、アナタにも心当たりないわよね」
「恋煩い。だったりしてな?」
唐突なその言葉を発したのは、聞き耳を立てていた虎於であった。私と姉鷺は、弾かれるようにして彼の方へ顔を向ける。
「悪い。言ってみただけだ」
「も、もう!やめてちょうだい!心臓に悪い!」
虎於に向かって拳を振り上げて見せる姉鷺を、私はただ眺めていた。
心臓が、何故か嫌なリズムで鼓動を刻む。
まさか、そんな。まさかだ。
楽が、春人を…?
いや、ありえないだろう。私は馬鹿な考えを打ち消すように、ゆるゆると頭を左右に振った。