第13章 プロデューサーさんまでカッコ良いんですね…
廊下へ出るなり、私は環に問う。ちなみに、まだ口を覆う手はどかしていない。
『今日!夜は予定空いてますか!?』
「んぐんぐ、」
環はこくこくと頷く。
私はぐりんと首を回して、今度は隣に立つ壮五へ質問を投げる。
『今日、お仕事は何時に終わりますか?』
「え、っと…今日の仕事はこれだけで、18時には ここを出ます」
頭の中で計算する。ここを18時に出れば、彼らは事務所に19時には帰り着いているだろう。念の為に余裕を見積もって…
『19時半!19時半に、小鳥遊事務所に迎えに行きます。その時にゆっくりと話をしましょう。良いですか?良いですね』
「んぐー」
また環はこくこくと頷いた。
私は胸ポケットから名刺を1枚、乱暴に取り出す。
『逢坂さん。申し訳ないんですが、この番号に 四葉さんの携帯からワンコール頂けますか。お願いします』
「わ、分かりました!」
名刺を受け取る壮五。
私は、そっと環の口を解放する。
「っは…、はー苦しかった!なぁあんた、口と一緒に鼻も押さえてっから!それってマジで死ねるから!」
『私の事は、誰にも話さないで下さい』
「わ…分かりました」
有無を言わさぬ圧を放ち、環に詰め寄る。
敬語を敬遠する環も、思わず丁寧語になってしまうくらいには。私の真剣さが伝わったらしい。
『では、今夜19時半に。事務所の下に着いたら連絡を入れますので 降りて来て下さい。よろしくお願いします』
それだけ言うと、私はTRIGGERの楽屋へと戻るのだった。
「…凄いな、あの人…。何が凄いって、完全に環くんの人となりを見抜いてる。
君じゃなくて、僕に名刺を渡して 環くんの携帯からワンコールをするように言ったあたりが」
「あー…俺って忘れっぽいかんな」
「それに、僕達あの人に小鳥遊事務所だって事言ってないのに どうして知ってたんだろう」
「さぁ?わかんね」
「知り合い、なんだよね?」
「…たぶん」
「いいなぁ…。ねぇ!TRIGGERの裏話とか聞いてきてね!」
「めんどっちいから嫌だ。そーちゃんが自分で聞いたらいーじゃん…」