第99章 間違ってると思ったことは、間違ってるだろってそう言いたい
「どれほど激しい振りでも完璧に、まるで群舞のように、ぴったりと動きが揃うんだ。
じゃあ、どうしてあそこまで見事に揃うか。あの3人はね、同じ振りを繰り返し練習するんだよ。こっちが呆れるほど、数十回。数百回と。ただひたすらに同じ振りを繰り返す。それだけやって初めて、動きが体に染み付き、踊る事に頭を持っていかれないで済む。体を正確に動かすことだけに集中出来るでしょう?
それだけやった者だけが、理想の動きの終着点に到達出来るんだよね。もっと恐ろしいのは、彼らは3人が3人とも、毎回その境地に行き着くこと。そうやって、TRIGGERの完璧なダンスは生まれるんだ」
この説明を、私がしても説得力は生まれない。元TRIGGERの振り付けをしていた男が語るから、意味を持つのだ。事実、4人は大人しく彼の言葉に耳を傾けていた。
私はふと、疑問に思う。彼らは、TRIGGERの生ステージを間近で見たことがあるのだろうか。手始めに、1番近くにいた悠に訊いてみる。
『悠は、TRIGGERの生ライブを観たことってあるんですか?』
「あるに決まってるだろ。敵情視察は基本だし」
『本当に?』
「……チラっとな」
つまりは、真剣に観覧したことはないという意味だ。虎於も巳波も、悠と大して変わらない返答であった。
しかしトウマだけは、他の3人と違うことを私は知っている。彼はかつて、誰よりも近くでTRIGGERのステージを観ていたのだから。
あの、Block or Whiteという大舞台で。NO_MADのメンバーとして。
そんな彼だから、嫌でも理解してしまったのだろう。自分達がまだ、TRIGGERの域には届いていないこと。