第99章 間違ってると思ったことは、間違ってるだろってそう言いたい
『確かに、初めての振り合わせでここまでのレベルに達したことは素晴らしいと思います。しかし、ただそれだけのこと。TRIGGERの上どころか、並んでもいませんよ』
「ちょ、春人くん!?ハッキリ言い過ぎぃ!!」
あからさまに顔を歪めた4人と私の間に、振付師は割り込んだ。ならばと、私はそんな彼に意見を求める。
『貴方は今の彼らのダンスがTRIGGERに並んだと思いましたか?』
「いや…それは、思ってない、ケド」
「何だよ振付師!ハッキリ言えよな!」
「そうですよ。さきほどは興奮して、私達に拍手まで贈っていらしたのに」
「ハッキリしない男はモテないぜ?振付師」
突然、矢面に立たされてしどろもどろの彼。そして、トウマは相変わらず口数が少ない。おそらくだがトウマだけは、心のどこかで察しているのかもしれない。自分達が、TRIGGERにまだ及んでいないことを。
そんな彼の気持ちを知ってから知らずか、振付師は4人に向かって。特にトウマに向けて静かに語り始める。
「君たちは、どうしてTRIGGERのダンスがああも人を惹きつけるか分かるかな」
「………か、完璧だからだ」
長い長い沈黙の後、トウマは悔しそうに呟いた。彼がTRIGGERをそう評したことを、他のメンバーは驚きの表情で見つめている。さらに、振付師は真面目な顔をして続けた。
「そうだね。それも、当たり前に完璧だからだ」