第99章 間違ってると思ったことは、間違ってるだろってそう言いたい
「あの4人だけど、最近は僕のダンスレッスン受けてくれるようになったんだ」
そう話すのは、元TRIGGERの振付師で、現ŹOOĻの振付師の男。私は白ジャージに身を包み、嬉しそうな彼の顔を横目で見た。
『そうみたいですね。まぁようやくアイドルとして通常の姿になってくれただけですが』
「あはは。春人君は相変わらず厳しいなぁ」
私達が談笑をしていると、すぐに彼らはレッスン室に現れる。誰一人として欠けていない4人を見て、振付師はより嬉しそうに笑った。
最近は個々にレッスンを重ねてきたメンバー達。今日はようやく振り合わせを行える。
流す新曲に合わせ、彼らは踊る。バラバラだったピースが集まって、1枚の絵になる瞬間。何度見てもこの瞬間は、どうしたって胸が震える。
それにしても、初めての合わせとは思えないほど彼らの動きはマッチしていた。やはり、個々人の能力が異常に高いからこそ成せる技なのだろう。当然、本人達もそれは感じたようでご満悦だ。
「すげー良い感じ!明日ライブでも大丈夫ってぐらい!」
「もう完成で良いんじゃないですか?空いた時間を、ぜひ作曲の方へ回したいですね」
「冗談抜きで、TRIGGERのダンスと並ぶ出来だったんじゃないか。なぁ、トウマはどう感じた?」
1人物言わぬトウマに、虎於は問う。彼が一瞬だけ困った表情を浮かべたのを、私は見逃さなかった。しかしすぐに歯を見せ笑い、虎於に告げる。
「お、おう!だな。今のはTRIGGERの上を行っ」
『行ってません』
私は、浮かれる4人の前に仁王立ちして言い放った。