第98章 気付かないふりをするのがマナーでは?
その様子を、了は無言で睨み付けている。揃ったŹOOĻメンバー。私は私で、彼らを馬鹿みたいに見上げていた。
やがて、トウマが了に声を掛ける。その声はほんの少し震えていて、いかに彼が勇気を振り絞っているかが窺えた。
「了、さん…。頼む。こいつのこと、諦めてくれねぇかな」
「……あっははは!ねぇ、あはは!それさぁ…
本気で言ってるのか?」
「っ、」
狂気すら感じる、了の語り口調。喜と怒と哀と楽が、ころころ瞬時に切り替わるのだ。裏と表で正反対の色を持つオセロの駒も、顔負けなくらい。
息を飲むトウマの隣をすり抜けて、虎於がこちらに一歩近付いた。そして、私の肩口からテーブルへと手を伸ばす。彼の目当ては、さきほど私がサインをさせられそうになっていた書類だった。
彼はその用紙を四つ折りにして、自分の懐へ入れた。
「了さん。悪いが、俺もトウマ側だ。もう、やめないか…こういうこと」
目をカッと見開き、瞳孔を縮めた了は叫ぶ。
「お前ら…っ、誰に何を言ってるのか分かってるのか!?この僕を…裏切るって!?それで、こいつの側に付くって!?
ふふ…はは…笑えるよ。お前達、理解してないのか?こいつはTRIGGERのプロデューサーだ!TRIGGERのことを愛していて、TRIGGERを常に最優先して物事を決める!そんな奴の一体なにがっ」
「そんなこと分かってる!コイツがどれほどTRIGGERのこと大事にしてるかなんて、そんなこと…分かってるんだよ!」
悠が、唸るように叫ぶ。凄い剣幕で捲し立てていた了も、その懸命さに思わず息を飲んだ。
「でも、こいつは…オレ達を見てくれたんだ!ŹOOĻを、愛してくれた!
なぁ、了さん…。あんたはどうだった?ちゃんとオレ達を見てくれてるのかよ!?ŹOOĻを…ちゃんと、愛してくれてる?」