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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第98章 気付かないふりをするのがマナーでは?




ナギと巳波は、互いのことを良く思っていない。おそらくは、何か行き違いがあったのだとは思うが。
とにかく、だ。ナギは そんな相手に、自分の大切な友人に会いに来て欲しいと願った。そういう心境になるタイミングは、限られているだろう。そう、例えば…

その友人に残された時間が、もう長くない など。

真剣に言葉を紡ぐ私を見て巳波は…ただ、唇を歪ませた。


「なんだ。そんな理由だったのですね。期待を裏切ってしまうようで申し訳ありませんが、私はとっくに知っていますよ。桜さんが、ノースメイアで…息を引き取ろうとしていること」

『え…』

「知っていて、今ここにいるんです。それよりも、どうして貴女が、桜さんの近況を知り得ているのでしょうか?六弥さんが、お話になったのですか?
だとしたらどうして…桜さんと縁もゆかりもないはずの貴女に、彼はそのような話を打ち明けたのでしょう」


今度は、私が眉間に皺を作る番だった。


『そんな話は、後からいくらでも聞かせてあげます。貴方が考えている通り、私と桜さんは過去に会っている。でも今は、そんなことどうでもいい。
どうして、会いに行ってあげないのですか。桜さんは、貴方に会いたいと祈っているかもしれない!今の、この瞬間も…。分かっているでしょう?死んでしまえば、その人とはもう二度とっ』

「そんなこと、わざわざ言われなくても理解しています。それに、不愉快です。その押し付けがましい願望を、私に押し付けないでください」


脳内で、昨夜のナギの言葉がリフレインする。彼は私に言った。巳波を説得してくれと。春樹に一目でいいから、会いに来るようにと。しかし本当にそれが、私に出来るのだろうか。

昨夜は、ナギの願いを必ず叶えてみせるという気概だった。それは嘘ではない。でも…今こうして目の前に立つ巳波の表情を見ていたら、その自信がどんどん溶けていく心地だった。

そこへ、静かに扉が押し開かれる。


「行ってこいよ、巳波…。春人の言ってること、オレも同じように思う」

「あぁ。少しくらいの間 お前が居なくても、ŹOOĻには俺がいるからな。何も問題はない」

「ミナ。行って、会って来い。桜さんは、お前にとって大切な人なんだろ」

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