第97章 諦める理由にはならねぇだろ?
「俺がお前に言いたいことは、これだけだ。
もう二度と、あいつにあんな真似をさせるんじゃねぇ」
「あんな真似、か。悠から聞かなかったか?あいつは俺の性奴隷だ。どう扱おうが、こっちの勝手だろう?そういう契約の元、あいつ自身も納得して今うちにいる」
相手を煽る為、挑発するように笑ってみせる。もう少し突けば、手を出して来るだろうか?
「あんた達は、世間じゃ王子だ騎士だと騒がれてるが、実際には全然そうじゃない。ただ、色んなもんに守られてるだけの存在だ。だったらこれからも、それでいいじゃないか。お城の中で大切にされていればいい。まるで、か弱い箱入りのお姫様みたいにな」
楽は目をカッと見開くと、流れるようなスピードでこちらの胸倉を取った。そして、そのまま俺の背中を壁に打ち付ける。
人を射殺しそうな鋭い視線が、真っ直ぐにこっちを捉えた。
「契約だ、納得だ、そんなもんは関係ねぇんだよ。さっき言ったはずだぜ。俺が言いてぇのは、ただ1つだ。
あいつに、もう金輪際、手を出すんじゃねぇ」
「…もし、聞かないと言ったら?」
「どれだけのファンがお前のライブを望んでいようと、俺が二度とTRIGGERとしてステージに立てなくなろうと、春人の奴に心底 嫌われようと…
お前のことを、殺してやる」
その言葉が とても冗談には聞こえなかったから、俺の体は少しだけ震えた。
しかし、すぐにまた余裕の表情を浮かべてやる。そして息苦しいのを我慢して、掴まれた胸倉に視線を向けた。
「暴力は、振るわないんじゃなかったか?」
「……まだ、殴ってないからセーフだ」
まだ…ということは、もしや俺を殴りつけるルートに入っていたのだろうか。